Consciousness?








「えーっ!?嘘ー!?」

そんな声が聞こえたのは誰も居ない静かな廊下だった。
妙にその声が響き、その後に別の声が聞こえてくる。

「そんなに叫ぶ事じゃないだろ!誰か来たらどうするつも…」
「わ、分かってるわよ、それくらい!じゃなくて…!!」



ハーマイオニーとドラコが共にこんな事をするようになったのは数年前から。
こんな事、というのは自称、密会。

何も隠れて話す事はないのだが、人前で普通に話す事をハーマイオニーは許さなかった。
仕事仲間に知られては面倒だ、と言って聞かない。
あまり賛成したくないが仕方なくドラコは彼女の言い分に従った。
そんな関係がホグワーツを卒業して魔法省にいる今もなお、続いている。

恋人でも友達でも何でもないこの関係。
何でこんな「密会」などしているのかは分からない。というか忘れてしまった。
おそらく単純なきっかけだったと(ハーマイオニーは)思う。
気付いたらよく2人でこうして話す事が多くなっていた。



「まさかあなたがマグルに行くなんて…信じられないわ」

話は戻り、ハーマイオニーは声を震わした。
先ほど、ドラコが言った衝撃な事実に驚きを隠せないでいる。


---明日、マグルに行きたいんだけど、よかったら案内してくれないか?


と、いきなり言ってきたのだ。

「そんなに驚く事か?別にいいじゃないか、僕がマグルに行ったって」
「でも、穢れた血!とか私の事呼んでたあなたが…」
「おいおい、何年前の話だよ?」

ドラコは軽く前髪をかきあげた。

「グレンジャー、それで君の返事は?」
「え?……あ、返事ね。いいわ。私でよかったら」

はっとしてハーマイオニーは返事をした。

穢れた血と呼ばれていた時代から10年以上たっている、今。
人は変わるものだとハーマイオニーは改めて実感した。






「で、でも何でマグルなんかに?」

不思議とそわそわとしてよく分からない気持ちになっている。
別にドラコに誘われた事を嬉しいと思っているわけではない。
そう、きっとただ、まだ信じられないだけ。
あれだけ学生時代に険悪だった仲の私達が…と。

「ああ、ちょっと社会勉強を…」
「しゃ、社会勉強…!金持ちの坊ちゃんの考えてる事は分からないわ…」
「……馬鹿にしてるのか…」
「別にしてないわよ」

大げさにため息をつくとドラコはじろりとハーマイオニーを睨んできた。
相変らずその顔つきだけは昔から変わらない。


「……………ん?ちょっと…ね、ねぇ…」


ふとハーマイオニーはここである事に気付いた。

「何だよ」
「その、えーっとね…そ、その誘いってのは…」
「………」
「あ、いや…べ、別に何でもないの!気にしないで」

と、言い慌てて後ろを向く。

ふと彼女は思った。
違う意味だとはしても、これは立派な……


「もしかして、デートみたいだとか?」


おそらくここで何かを飲んでいたら吐くくらいの勢いでハーマイオニーが咳きをした。
ドラコの言う事は何もかも遠慮がない…気がする。

「違うわよ!だ、だってあなただってか、彼女の1人や2人や3人や4人くらい…」
「……グレンジャー…君って僕をそんな風に見てたのか…?」
「もちろんよ。だってドラコ・マルフォイだもの」
「…」

そう思うと急にハーマイオニーは動揺してきた。
何も恋人や友達でないとはいえ、20代の男と女が2人で出かける。
デート、と呼んでも不思議ではない。




「とにかく、明日の10時にキングスクロス駅で」

ドラコはちらりと自分の腕時計を見て言った。

「分かったわ…」
「じゃあ、僕はこれから会議があるから。また明日」
「え、えぇ…」

いともあっさりドラコはさっさとその場から急ぎ足に去って行ってしまった。

「……な、何意識してるんだか…」

と、誰も居ない廊下に一人呟いてみる。
もちろん誰にも聞かれてはいない。

「…はっ!でも何で私を誘ったのかしら?他にもマグル出身の人いたのに…」






……。


考えれば考えるほど疑問が浮かぶ。
少なくとも、明日の事を心なしか意識しているのは…
過言ではなさそうだ。











※しゃ、社内恋愛とか…いいかな、と……ごめんなさい…。